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第5回 お客様とコンサルタントの関係

 第5回コラムのテーマは、「お客様とコンサルタントの関係」です。ここでいうお客様というのは、コンサルティングの依頼主のことです。英語でクライアントという場合もあります。経営課題の解決のためにコンサルタントを雇う企業は多くありますが、すべてが期待以上の成果を上げるわけではないことは皆様もよくお分かりだと思います。私も、これまで50以上のコンサルティングプロジェクトに携わりましたが、思うような成果を出せず、お客様に申し訳ない思いをしたことが何度かあります。成果があがらない原因は様々です。コンサルティングの計画(目標設定、課題設定と解決方法、コンサルティング期間など)の不備、コンサルタントの能力不足、コンサルティングを受ける側の問題(受け手側の体制、本気度、情報を十分に開示しない、トップマネジメントの関わり方)など、ケースバイケースです。私は、様々ある原因の中でも、「お客様とコンサルタントの関係」が、コンサルティングの成否を大きく左右する要素の一つであると考えています。

  「お客様とコンサルタントの関係」は、決して単純なものではありません。ある面では、お客様は文字通り、お金を払う雇い主であり、コンサルタントは雇われる側です。しかし、一方では、コンサルタントは、お客様を指導する存在であり、お客様は指導される側という関係でもあります。私は、「お客様とコンサルタントの関係」は、大きく整理すると4つのタイプに分けることができると考えています。

[タイプA] お客様とコンサルタントが共に高め合う  ~創発チーム型~
 コンサルタントとお客様がそれぞれの役割を理解し、共通の目的・目標に向けて協力して働くチームのような関係。お客様とコンサルタントが、それぞれ持っている情報や知識を教え、教わり、協力して知恵を出し合う関係。

[タイプB] コンサルタント=先生、お客様=生徒  ~知識授受型~
 コンサルタントは先生であり、お客様が生徒である、という関係。コンサルタントは常に指導的立場からお客様に接し、指示を与え、アドバイスを行う。コンサルタント側に圧倒的な知識・知見が存在する場合(実際にはそのようなことはないが、お客様がそのように思い込んでいる場合がある)、普遍的・汎用的な理論や知識を教授してもらう場合、コンサルタントが著名な人物の場合などに、そのような関係になる場合がある。

[タイプC] コンサルタントに全てお任せ    ~調査レポート型~
 コンサルティングはすべてコンサルタントにお任せというタイプ。このタイプは、外部のコンサルタントによる高度な分析と専門的な知見を活用することができるが、下手をするとお客様側の当事者意識が薄くなってしまう。その場合、何らかのアウトプット(レポートなど)は出来ても、現場の仕事が改善し、会社として革新するための成果はほとんど望めないことがある。

[タイプD] お客様=雇い主、コンサルタント=外注  ~作業切り出し型~
 コンサルタントは、お金でやとった外注であり、契約で取り決めた作業をしっかりやってもらうための存在。リサーチ(調査・分析)など、専門のスキルが必要な知的業務について、社内の能力や工数の不足から、コンサルタントを雇うという場合によくある関係。

  お客様とコンサルタントの関係は、企業の特性やニーズ、コンサルティングの狙いなどによって、最適な形を選択し、使い分けることが必要になります。しかし、私は、新しい価値を生み出し、イノベーションに取り組むコンサルティングが成功し成果を上げるためには、お客様とコンサルタントがタイプAの関係を作り上げることが必要だと考えています。コンサルティングは、普遍化された理論や汎用化されたフレームワークを基本として用いながらも、お客様固有の課題を解決に導くことであり、そのプロセスです。お客様固有の課題を解決するためには、業種・業界情報などの社外情報に加えて、社内の様々な事項を考慮する必要があります。そして、そのような情報はお客様の中にしかありません。確かに、経験を積んだコンサルタントであれば、様々な会社の状況をパターン化して理解していますので、少し社内の状況を見せてもらう(例えばオフィスで仕事をしているところや、実験室、会議の状況など)ことで、だいたいの内容を推察することは可能です。しかし、それだけでは、コンサルティングで成果をあげることは不可能です。コンサルティングを成功させるためには、コンサルタントとお客様が持つ知識や知見を融合することが必要なのです。
 また、コンサルタントは決して主役ではありません。現場を改善し、企業に革新を起こすのは、お客様自身です。主役は常にお客様なのです。お客様が当事者意識を持たない(持てなくなった)コンサルティングは、必ず失敗します。コンサルタントは、常にお客様が当事者意識を持ち、挑戦する気持ちを持ち続けられるようにサポートしなければなりません。そのためには、常に俯瞰的な目でお客様の現状と課題を見極めつつも、お客様の思いや気持ちを当事者感覚で理解する必要があります。お客様とコンサルタントは、常にお互いの役割をしっかりと理解しながら、共創することが必要なのです。
 お客様とコンサルタントがよいチームとなること、コンサルティングが成果をあげるために私が最も大切にしていることです。

株式会社ケミストリーキューブ
平木 肇


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