カテゴリー
コラム

第42回 情報調査・分析の難しさを克服する思考スキル

 新たなテーマ創出や事業化を進める上で、事業視点での情報調査や分析は不可欠です。しかし、「何を調査分析すれば良いかわからない」、「大量の情報を収集したが、それをどのように整理したら良いかわからない」、「調査会社に依頼したが、期待した結果が得られなかった」などといった問題がしばしば見受けられます。

 今回のコラムでは、こうした問題を解決するために役立つ思考スキル、「構造化」と「見える化」について紹介します。

 「構造化」とは情報や思考を要素へ分解し、それらの関係性に基づいて整理する手法です。複雑な問題や概念を理解する際、問題解決を進めるとき、または新しいアイデアを生み出す過程で、構造化は重要な役割を果たします。構造化のポイントは、目的に最適な構造を選択し、その構造や関係性に基づいて思考を進めることです。なお、構造化を実践するためには、論理的思考や上位概念化・下位概念化の理解など基本的な要素スキルが求められますが、これらについては今後のコラムで説明します。

 「見える化」とは、特定の目的を達成するために、そのままの状態では見えない情報や思考を視覚的に表現することです。見える化することで、抽象的な思考だけでは得られない気づきを得ることができます。見える化を行う際は、目的達成に必要な情報を選び出し、それをシンプルな視覚表現に落とし込むことが重要です。全ての関連情報を1枚の図に詰め込むのは説明のためには有効ですが、新たな洞察を引き出すという目的からは外れてしまいます。

 なお、「見える化」と似た言葉に「可視化」がありますが、弊社ではこれらの違いを明確に分けています。「可視化」は、視覚的に表現することそのものを指し、「見える化」は明確な目的を持ち、可視化後のアクションが想定されていることを指します。

 では、これらの思考スキルを使って、調査分析によくある2つの問題を解決するためのアプローチを見ていきましょう。

 最初の問題は、「調査分析の目的が明確でない」という問題です。明確な目的がなければ、分析結果は具体的な行動に結びつきません。この問題の解決策として、目的を明確化する手順を示します。調査分析の内容をスタートポイントとして、その目的を問うことから始めます。そしてその目的の目的を問う。これを繰り返し、適切な最上位目的に辿り着くまで実行します。その後、最上位目的から手段へと戻り、達成したい目的に対して手段が適切かどうかを検証します。これを図で見える化して進めていきます。トヨタの「なぜなぜ分析」では、根本原因を探求するための「なぜ」を5回繰り返しますが、それと同じように、目的を明確にするための「なぜ」を何度も問い続けることが重要です。

 次に、「顧客価値がわからない」という、技術者がよく直面する問題について考えます。上層部から「顧客視点で考えるように」との指示があっても、具体的に何をどのように考えれば良いのかが分からないことがよくあります。ここでは、弊社が提供する技術の構造化手法「iMap」が役立ちます。「iMap」は、顧客価値、価値コンセプト、目的機能、技術機能という要素を構造化し、見える化することで、顧客価値と自社の技術との接点を明らかにし、自社のコア技術の発見やイノベーション創出に役立ちます。

 これらの手法を使って、皆様が抱える問題や課題を構造化・見える化してみてはいかがでしょうか?情報の構造化と見える化は、調査分析スキルを向上させるだけでなく、イノベーション創出にも大いに貢献します。

 なお、このような思考スキルは一人で学ぶだけでなく、チーム全体で共有し、練習することでより大きな効果が得られます。これは、個々の視点や知識を組み合わせることで、より広範で深い洞察を得られるからです。また、チーム全体で同じ思考フレームワークを共有することで、より良いコミュニケーションと協力が可能になります。

 弊社では、技術者や研究者、そして情報分析をサポートするスタッフの皆さんが研究開発を推進し、イノベーションを創出するための情報や知識の構造化・見える化手法を提供しています。皆さまが情報調査と分析の難しさを克服し、新たな視点で情報を整理・見える化し、ビジネスの意思決定や新技術や新製品の創造を進める一助になれば幸いです。    

株式会社ケミストリーキューブ
葉山 英樹

                                   

【関連情報】
第10回コラム 技術構造化手法iMap アイマップ®
研究開発リーダー,Vol.12 No.3,p37-41,(2015) 顧客価値を起点にした技術の構造化の実践ノウハウ、平木 肇

本ウエブサイトに記載されている製品・サービス情報、技術情報、並びにこれらを表現するための文章・図表・画像それらの集合(以下、コンテンツ)に関する著作権は、すべて株式会社ケミストリーキューブ及び著作者に帰属するものです。著作権保有者の許可なく、コンテンツの複製・転載・配布を行うことはご遠慮ください。