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コラム

第39回 特許情報を活用した新用途探索

 近年、知財(調査)部門では、特許情報を活用して事業に貢献する活動を強化しています。その1つとして、特許情報を活用して新用途を探索する取り組みが行われています。一般的な方法は、特許分析ソフトを活用して、自社技術を表すキーワードや特許分類などから統計的に分析するものです。しかし、多くのお客様では、期待した新用途を発見することは難しいと認識されています。

 この原因はいくつもありますが、もっとも多いのは、事前準備が不十分なまま進めていることです。例えば、弊社の標準用途探索プロセスで言えば、①~⑥までのプロセスのうち①~④が事前準備です。

①対象の決定~用途探索の対象となる技術または製品を定義する。
②既知用途の構造化~これまで知っている用途をカテゴリ別に見える化する。
③ゴール設定~用途の選定基準、特許調査段階での抽出基準を設定する。
④機能定義~自社技術により顧客価値を生み出す機能を定義する。
⑤特許調査~特許情報(母集合)から可能性のある用途を一次抽出する。
⑥用途選定~採用基準に基づき一次抽出用途を検証し、最終選定する。

今回は、事前準備のうち、特に難しい③ゴール設定④機能定義について紹介します。

ゴール設定

 ゴール設定とは、「用途の採用基準」と「特許調査における抽出基準」の2つを決めることです。用途探索は、自社の目的・ゴールに合致する用途を見つけることです。そのためには、最初に、どのような要件を満たす用途を見つけ出すのかを採用基準として設定する必要があります。しかし、実際には、採用基準が曖昧なまま用途探索の作業が進められ、最後にどのような基準で選べばよいのかを議論するようなことが行われています。但し、採用基準は、一般的にかなり多くの項目からなります。例えば、事業領域、技術の実現性、用途の実現時期、顧客価値の大きさ、市場規模、市場成長性、競合技術優位性などです。特許調査段階でこのような採用基準をもとに選別することは、手間と時間がかかり、効率の良い進め方とは言えません。そこで、特許調査段階では、簡易的な抽出基準を決め、その基準に基づき、短時間で用途候補を抽出することが効率的です。
 このように、先に、ゴールの議論を行うことで、知財部門とR&Dとでめざすものが認識され一致するため、より効率的な用途探索につながります。

機能定義

 従来の特許調査は、技術を中心に調査を進めます。技術をもとに特許調査を行うと同じポジションの競合企業の特許が多くヒットし、既知の用途か、広い領域の用途(例えば半導体用など領域レベルの記載)などになり、期待した用途は見つかりにくくなります。
 用途とは、自社技術が生み出す機能により、顧客の問題解決や課題実現を図るものです。つまり、顧客価値につながる自社の機能を考えることが重要です。多くのR&D現場では、自社製品の特性をあげるための技術開発には長けていますが、機能をもとに考えていくことには慣れていません。お客様で、「顧客の価値につながる機能は何でしょうか?」という質問をしても、適切な答えが返ってくることはほとんどありません。このような場合、弊社iMap※1を活用することをお勧めしています。iMapは、自社の技術を、顧客価値を端的に表現した価値コンセプト、目的機能、技術機能に分けて記述し、俯瞰的に見える化することで、顧客価値につながる機能に気づくことが可能になります。

※1 第10回コラム 技術構造化手法 iMap アイマップ®

 最後に、弊社が推進している用途探索の基本的な取組み姿勢を2つ紹介致します。

探す」のではなく「創る」

 弊社の用途探索は、「特許情報から用途を調査する」ということではなく「特許情報をヒントにして、新たな用途を創出する」というスタンスに立っています。基本的な姿勢を「探す」から「創る」に変えることで、用途探索そのものに対する取り組みがポジティブに変わっていきます。また、特許情報をヒントにするという考え方をとると、特許情報を様々な角度から活用することにつながり、その情報として価値が飛躍的にあがります。

探索の意思を重視

 用途探索の成否は、プロセスだけで決まるものではありません。上層部の思い、R&D技術者とR&Dスタッフの思いがなければ成功には至りません。弊社では、成功に寄与するのは、思い(意思)50%、プロセス50%と考えています。私が、良く引用する高木義和名誉教授※2の研究室のポリシーを紹介します。「もっとも大切なのはWill(意志)。 情報を生かすのは人、その思いです。」 

※2 新潟国際情報大学(元情報システム学科教授)
https://is.data-base.co.jp/takagi/20150519174627.pdf

 用途探索を組織のミッションとして推進・定着していくには、多くの課題があると思いますが、ぜひ今回取り上げた観点を参考に、その取り組みの在り方を考えて頂ければと思います。

ケミストリーキューブ
葉山 英樹



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