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コラム

第23回 コンサルティングの価値

 コンサルティングというビジネスは、非常に曖昧性の高いビジネスです。実体のあるモノをつくって商品として販売しているわけではありませんし、店舗をもってサービスをしているわけでもありません。また、コンサルタントと名乗る人達の仕事の内容も様々です。企業経営分野のコンサルタントに限っても、実際の企業の現場に入って課題解決をする人もいれば、社外取締役として会社に関わる人、講演やセミナー・研修講師を主業とした人、書籍の執筆が中心の人など様々です。「コンサルタントって何ですか?」と問われても、なかなか端的な答えはできないほど、その仕事の中身は多様で曖昧です。
 しかし、だからこそコンサルティングビジネスを行う者は、自らの仕事の定義を明確にしなければなりません。そうしなければ、売上と利益をあげるための何でも屋になってしまったり、周りに流されて右往左往してしまいます。

 自らの仕事の定義をするときの最も重要かつ基本となる問いは、「誰にどのような価値を提供することが自分の仕事なのか」ということです。すなわち、顧客価値を徹底的に掘り抜くことです。
 ちなみに、弊社のお客様は、ものづくり企業のR&D(研究・技術開発・製品開発・生産技術開発)です。そこに働く技術者、研究者の人たちです。弊社が貢献する課題は、価値創造力、そして技術力の向上です。そして、弊社の価値は、「会社のミッシングピースを埋めること」です。「自社のR&Dをこう進化させたい」「こう変えたい」という思いを持ちながら、なかなかその実現へむけて取り組めていないお客様企業のなかに欠けているピースを埋めること、それが弊社のコンサルティングビジネスの価値だと考えています。これは、言い換えれば、コンサルタントが課題解決をするわけではないということです。お客様企業のなかに不足しているものを埋め、お客様企業の人たちと一緒に課題解決に取り組むことを意味しています。
 当然、会社によってミッシングピースは様々です。そして、ミッシングピースの内容によって、弊社がお役に立ちするためのコンサルティングの方法や力を入れるポイントも異なってきます。そこで、コンサルティングを受注する際、実践手法や進め方だけでなく、ミッシングピースを埋めるうえで弊社がお役に立てるイメージを、お客様企業の中のキーになる方々と共有することを大切にしています。

 ビジネスにとって売上をあげる、利益をあげることは絶対条件です。特に弊社のような小規模な会社においては、売上と利益及びキャッシュフローの現状と見通しを常に意識し、日常の仕事と並行して、将来の売上につながる次の手を仕込んでいかなければ存続はできません。しかし、所詮売上と利益は目標にはなり得ても、目的にはなりません。弊社のコンサルティングビジネスの目的は、「技術力・価値創造力へ向けてR&Dを進化させたいという思いを受け、お客様企業の方々とともに実現へむけたミッシングピースを埋めること」です。そして、その実現のためのコンサルティング能力を磨き、実践ノウハウを独自技術として蓄積しています。

 自社のビジネスとは何かを考えることは、未来を切り開く力を高めるうえで非常に大切だと私は考えています。特に、ものづくり企業は、実体のある商品(モノ)があるだけに、それを考え抜かなくても仕事ができてしまいます。しかし、一度、商品を離れて、顧客価値の視点で自社のビジネスとは何かを考えてみてください。それが、経営視点でR&Dを考え、その役割と機能を高めるための第1歩になると思います。そして、自社が磨くべき組織能力と技術は何かを具体化するための柱が見えてくると思います。

ケミストリキューブ
平木 肇

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