私は、日ごろ、ものづくり企業のR&D現場をフィールドとしたコンサルティングに取り組んでいます。その中で、価値、とりわけ顧客価値は、R&Dを進化させていくうえで非常に重要なコンセプトであり、概念であることを実感しています。また、「価値を起点にしたR&Dの実践、ものづくりプロセスの実践」という弊社のコンサルティングのコンセプトに共感いただける方々とお会いできる機会も多くあります。
しかし、一方で企業の現場において、「顧客価値」が明確に定義されていない、あるいはその理解が共有されていないことをケースを多く目にします。自社の製品や技術がお客様に提供している価値をはっきり答えられない、あるいは誤解して捉えている場合も多くあります。
例えば、ある会社にて、「あなたの会社の製品が提供している顧客価値は何ですか?」と質問した際、「それは信頼性ですよ。うちの製品は高信頼性で評価されていますから」という答えが返ってきたことがあります。しかし、これは顧客価値を説明してはいません。高信頼性は製品の機能であり、顧客価値ではないのです。顧客価値とは、信頼性という機能をとおして、お客様がどのようなメリットを得ているのか、喜びを感じているのかを具体的に表現したものです。例えば、製品が生産装置であれば、「メンテナンスの頻度が少なくて済む」「メンテナンスコストが安くなる」「ラインが止まるリスクが少なくなる」などが考えられます。このような機能と価値の混同は、顧客価値に対する誤解の最もよく見えられる例です。
価値を具体化するためには、自社の製品から離れて、お客様そのものに視点を移して考えことが必要になります。その際、2つの基本的な問いを行います。
1.購入~使用~廃棄の一連の顧客プロセスのなかで、顧客は自社の製品からどのようなメリットを得ているのか、嬉しいを感じているのか
2.なぜ、顧客は他社の製品ではなく自社の製品を買うのか
この2つの問いに答えるためには、自社のお客様を明確に定義し、その姿を具体的にイメージすることが必要であり、それがお客様への理解を深めることに繋がるのです。これらの問いに対して、最初は明確に答えられない、あるいはよくわからないこともあると思います(実際には、答えられない場合のほうが多いのです)。大切なのは、上記の問いをとおして得られる「自分達はお客様のことをよく分かってなかった・・・・」という気づきであり、それが顧客価値を起点としたR&Dへ進化するための第1歩になります。
ぜひ、皆さんも自社のお客様を具体的にイメージしながら、上記2つの問いを現場の中で議論してみてください。きっと多くの気づきが得られることと思います。
株式会社ケミストリーキューブ
平木 肇
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