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第11回 知の探索 3つのアプローチ

 経営学の分野に、両利きの経営という考え方があります。これは、知の深化と知の探索という2つの取り組みを企業経営の現場に組み込み、バランスよく実践している企業が中長期的に高い成長力をもっているというものです。知の深化とは、自社が持っている知識をさらに深めることであり、既存事業や技術を深く掘り下げ、知識を蓄積していく活動であると理解できます。これに対して、知の探索は、自社が持っている知識の枠組みを超えて、新たな知を獲得すること、すなわち、イノベーションを興す活動です。イノベーションを興すためには、自社が持つ既存の知識に新しい知を組み合わせる必要があり、知の探索にどう取り組むかは企業の現場、特にR&D現場の重要な課題となっています。

 しかし、実際のR&D現場では、闇雲に展示会や学会、異業種の交流会などに行き、情報収集活動をするなど、知の探索が戦略的に取り組まれているとは言い難い状況も目にします。知の探索の目的は、イノベーションを興すための新しい知識を獲得することです。そのためには、探索の考え方を明確にして取り組むことが必要だと考えます。弊社では、イノベーションへ向けた探索を、第10回コラムで紹介した技術構造化手法 iMap アイマップ®をベースに、下記の3つのアプローチで整理しています。

①価値革新

1つめは、価値の革新です。これは、iMap アイマップの左側の価値コンセプトに着眼したアプローチで、現在のお客様に提供している価値をどう変えていくのか、高めていくのかをイノベーションのテーマとした取り組みです。ここでは、探索対象はまさに自社のお客様です。お客様の現在、そして未来を考察しながら、その課題を掘り下げていくことが探索の目的です。

②技術展開

 2つめは、技術の展開です。これは、iMap アイマップの中央に位置する目的機能(自社が保有する技術の目的的要素)に着目したアプローチで、自社の持つ技術を機能として定義し、それを展開することでイノベーションを興すことができる新たな市場、製品、そしてお客様を探すことが目的です。

③技術進化

 3つめは、技術の進化です。これは、iMap アイマップの右側にある技術機能(自社の保有する技術の手段的要素)に着目したアプローチで、自社の持つ要素技術を革新・高度化することで、イノベーションへつなげることをテーマとしたものです。

 オープンイノベーションという名のもと、外部の知識や技術を活用するために闇雲に動き回るよりも、イノベーションを生み出すための考え方を明確にし、そのためにどのような知識が必要なのか、そしてそれを獲得するためにどこを探すのかを共有したうえで、組織的・戦略的な知の探索を行うことが重要です。

株式会社ケミストリーキューブ
平木 肇



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