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第1回 コンサルタントのやりがい

 第1回コラムです。このコラムは、ものづくり企業における技術力・価値創造力の向上と技術人材の開発と、ケミストリーキューブのイノベーション・コンサルティングに関する話題を掲載していく予定です。ものづくり企業の経営者、開発設計・技術開発・研究開発(R&D)の責任者・管理者、現場で製品開発・技術開発に携わっている技術者・研究者の皆様の参考になればこの上ない喜びです。

 第1回のテーマは、「コンサルタントのやりがい」です。せっかくの第1回ですから、私のコンサルタント観や、ケミストリーキューブのコンサルティングについて知っていただきたいと思い、このテーマを選びました。世の中には、コンサルタントと名乗る職業が山のようにあります。不動産コンサルタント、フィナンシャルコンサルタント、キャリアコンサルタントなどいろいろあります。あるいは、コンサルタントという肩書で名乗ってはいるが、実際にはセミナー講師や講演、書籍の執筆が主で、現実の課題解決にはほとんど関わっていない人もいます。コンサルタントという肩書きは、世の中で最も名乗りやすい肩書きなのではないか、とも思えてきます。

 ちなみに私の肩書きは、イノベーションコンサルタントです。ものづくり企業のR&D(研究・技術開発・製品開発・設計・生産技術開発)をお客様として、その課題解決を支援するのが私の仕事です。企業が、将来の企業成長、企業発展のために、何か新しいことに取り組もうとするとき、目標を達成し成果につながるように、外部の人間としての視点、コンサルタントとしての経験と知恵を使って協働するのが仕事です。一般的な名称として経営コンサルタントというように名乗ることもありますが、私としては、イノベーションコンサルタントというほうがしっくりきます。私の仕事のフィールドは、現場です。特に、R&D(研究・開発・設計・生産技術などの技術部門)の現場が主なフィールドです。企業が、新たなチャレンジをし、成果を形にできるのは現場しかありません。新しい技術を創造し、商品を企画・開発し、ものづくりのための技術を磨く、まさにR&Dの現場で日々取り組まれています。”R&Dの現場をフィールドにしたイノベーションコンサルタント”というのが私の仕事です。

 私の仕事について、少し紹介しましたので、”やりがい”について話題を移そうと思います。コンサルタントをやっていると、苦しいことやしんどいことも多いのですが、同時に大きなやりがいを感じることも沢山あります。私が、最近やりがいを感じたエピソードを一つ紹介したいと思います。それは、ある製造装置メーカーでの活動でした。その企業は、規模はそれほど大きくありませんが、特定の分野で高いシェアを持つ、いわゆるグローバルニッチとして成長してきた企業です。そこで、次の開発テーマの企画と技術人材の育成の2つの狙いをもった活動を行いました。活動は、30代の中堅技術者が中心に、営業部門も交えて、複数のチームをつくり、顧客を研究しながら、その課題に関する仮説をつくり、実際の顧客提案をとおして、自分たちが実現するべき将来のソリューションとコアになる技術を具体化するというものでした。活動チームは、それぞれ試行錯誤をしながらも、顧客と自分たちの思いを具体化したよいプランを描いてくれました。そして、半年間の活動の節目として発表会を行い、経営幹部からも開発を実行に移していくよう、力強い方針を引き出すことができました。発表会の後の打ち上げは、活動の達成感もあってか大いに盛り上がりました。打ち上げの宴もたけなわになったころ、ひとりのベテラン技術者Aさんが私の横に来ました。その人は、30代を中心に編成されたチームの中で、数人参加しているベテラン技術者の一人でした。もの静かな人で、強い自己主張やリーダーシップを発揮するような人ではありませんでしたが、チームメンバーからは技術者として一目置かれている人でした。活動の最初のほうは、それほど存在感を感じませんでしたが、活動の中盤から後半の、仮説まとめや顧客への提案活動を行う段階では、ベテランとしての経験を活かし、静かにメンバーを引っ張ってくれた人でした。その人が、ビールを手にやってきました。「Aさん、お疲れ様でした。Aさんがチームにいてくれたおかげで本当によい活動になりました。ありがとうございました。」と、私はお礼を言いました。私は、心からそう思っていました。Aさんの技術者として、もの静かではあるが、みんなを側面から支援し、リードしてくれる姿に感銘を受けていたからです。すると、Aさんが「私は、今年で50歳になりますが、今までの技術者人生の中で、今回の活動は最高の時間の一つでしたよ」とおっしゃいました。私は、その言葉を聞いて、胸にこみ上げるものがあり、思わず両手でAさんの手を握ってしまいました。活動の中心となってくれた一人の技術者から、そのような言葉をいただいたことに私は大変感動し、充実した思いになりました。その夜の打ち上げで、飲みすぎてしまったことは言うまでもありません。

 魅力的な新商品が開発できた、開発期間が短縮できた、開発コストが削減できたなど、実際の成果を形にできた時は大きな充実感とともに大いにやりがいを感じますが、同時に、活動に携わった人々、経営者、管理者、技術者、研究者の一人ひとりが達成感を感じたり、気づきを得たり、仕事に対する意欲を高めたりしながら成長する姿を目の当たりにしたときに最もやりがいを感じます。ものづくりに関わる人々が、新しいチャレンジをとおして、創造性を発揮しながら仕事に取り組める職場をつくること、それがイノベーションコンサルタントとして私が仕事をする目標です。そして、それが企業を発展させる最大の原動力になる、と信じています。

株式会社ケミストリーキューブ
平木 肇

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