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コラム

第7回 技術経営 3つの要件

 前回に引き続き、技術経営に関するトピックスを取り上げたいと思います。
今回は、少し原点に戻って、技術経営とは一体何をすることなのか、について考えたいと思います。技術経営というと、何やら難しそうな印象を受けたり、最先端の研究開発型企業や一部の大企業が中心に取り組んでいるものというふうに考える方もおられますが、本来はとてもシンプルなもので、ほとんどの企業、(特に製造系企業は全ての企業)が取り組めるものだと思います。私が考える技術経営の要件は、以下の3つしかありません。

① 長期的視点にたって企業が経営されていること
② 企業の経営資源である技術を中軸に据えて企業成長を実現していること、もしくは実現しようとしていること ③ 自社の技術(技術的能力)を高めるために継続的な投資を行っていること

 上記の3つが満たされている企業は「技術経営を実践している」と言うことができます。また、技術経営をコンサルティングする場合、この3つ要件を実現することが基本的な指針になっています。それぞれの要件について、もう少し詳しく紹介したいと思います。

①長期的視点にたって企業が経営されていること
 競争力のある独自技術を創っていくためには、時間がかかります。言い方を変えれば、時間をかけて、試行錯誤しながら問題解決をし、蓄積された技術ほど、他社に真似できない強い技術になる可能性があります。時間をかけてしっかりと技術を造り上げていくためには、長期的視点にたって企業が経営されていることが絶対条件です。将来の経営環境の変化を読み、顧客価値の創造へ向けた自社のビジョン(ありたい姿)を常に指針にしながら経営を行っていくことが必要なのです。

②企業の経営資源である技術を中軸に据えて企業成長を実現していること、もしくは実現しようとしていること
 ここで言う技術は、単に製品を構成する要素技術、すなわち科学技術としての方式やメカニズムに関する知識という意味でなく、技術を使いこなし、目的を実現していく組織能力(平たく言うと、技術力)を指しています。

③企業成長の中軸である技術を高めるために継続的な投資を行っていること
 技術、すなわち技術力を高めるためには、個々の要素技術への投資に加えて、下記の2つの投資が重要です。

・価値創造力への投資
 どのような顧客価値を生み出すのか、現在の顧客価値をどのように向上・拡大するのかは、技術開発の目的であり、目標です。目的・目標を生み出す価値創造力への投資は、技術を高めるための投資そのものです。

・技術者、研究者への投資
 技術とは、単なる要素技術ではなく、技術を使いこなす組織能力を含めたものであるということはすでに何度か述べました。そして、組織能力を発揮するのは、現場で働く一人ひとりの技術者、研究者に他なりません。「技術に投資する」とは技術者、研究者同士、あるいは技術者、研究者と経営者が信頼し合え、一人ひとりが高いモチュベーションを持って自己を磨き、組織に貢献することができる職場環境をつくっていくために投資をすることでもあります。

株式会社ケミストリーキューブ
平木 肇

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