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コラム

第50回 教育研修は、人と組織の未来をつくる投資である

 多くの企業が、人材育成の重要な手段として Off-JT 型の研修を実施しています。しかし、「研修をやっても現場が変わらない」「せっかく新しい知識を得ても仕事で活かせない」という悩みを耳にすることも少なくありません。

なぜ、研修はうまく機能しないのでしょうか?

その要因の一つに、研修を“知識やスキルの伝達の場”としてしか捉えていないことが挙げられます。 

研修の真の狙いは「行動変容」――さらには組織文化の変革にあります。これは、個々人のスキル向上を超え、組織として大切にしたい思考や行動を共有していくことに他なりません。Off-JT 型の研修は、まさにその機能を担う最も重要な場の一つであると言えます。

組織文化とは、「暗黙の了解」「価値判断の基準」「行動様式のパターン」の集合体です。これらの要素を言語化し、全員で共有し、さらには行動を通してその価値を体感するプロセスを繰り返すことで、初めて“文化”として根づいていきます。

研修を組織文化の変革につなげるためには、以下の 5 つの観点を踏まえて設計する必要があります。

  1. どのような組織文化をつくりたいのか、組織文化をどのように変革したいのかを明確にし、そのための思考・行動を言語化・モデル化する
  2. 単なる座学ではなく、思考・行動を実際に経験する中で、その意味や価値を自ら解釈し学びを得るプロセス(経験学習)を組み込む
  3. 短期・単発型ではなく、一定の期間をかけて経験学習を繰り返す
  4. 知識の一方向的な提供ではなく、対話・議論を通じた共通認識の形成に多くの時間を使う
  5. 継続的に研修を実施し、受講者人口を増やしていく

 ケミストリーキューブのラーニングの中心にあるのは、経験学習理論に基づく学習デザインです。
その基本形は、以下のプロセスから構成されます。

  • 講義:求められる思考(プロセス・フレームワーク)行動を共有
  • ワークショップ:受講者同士がアイデアを出し合い、概念を自分事化
  • 現場での実践:実務で新しい行動を試し、周囲を巻き込む
  • 振り返り:経験を言語化し、次の行動につなげる

 これらのプロセスを 3 ヶ月〜1 年の期間をかけて繰り返すもので、まさに人の行動変容と組織文化の変革を支援するための場として設計されています。

 大手 IT・エレクトロニクス企業 A社では、40〜50 代の上級技術職を対象に、約 9 ヶ月にわたる「技術リーダー研修」を毎年実施しています。この研修を通して、技術リーダーとしての自覚と行動を促すと同時に、技術リーダーという役割を持った人材が組織の中で認知され、活躍できる文化をつくることにつながっています。

 大手化学メーカー B社の技術研究所では、30 代半ばの中堅技術者・研究者を対象とした「価値発見研修」を、約 1 年の期間をかけて実施しています。この研修を通して、技術者・研究者が“技術だけの視点”から脱し、価値 × 事業 × 技術を統合できる人材へと進化すること、そしてそのための思考・行動が共有化され組織の中に浸透していくことにつながっています。

  研修の真の狙いは、単に知識やスキルの伝達ではなく、人の行動変容と組織文化の変革です。イノベーションを生み出すためには、必ず投資が必要です。
研修とは、人と組織の未来をつくるための投資であり、企業として戦略的かつ継続的に取り組むことが重要です。

ケミストリーキューブ
平木 肇