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コラム

第44回 技術の棚卸への生成AI活用の利点と課題

 技術の棚卸は、企業が保有する技術資産を可視化し、戦略的に活用するための重要な取り組みです。イノベーションを生み出す基盤として、自社の強みや課題を把握し、将来の研究開発や事業展開を効果的に進めるために欠かせません。

 企業が持つ技術は、大きく形式知と暗黙知に分けられます。形式知は特許、技術報告書、設計書など文書化された知識を指し、暗黙知は技術者や研究者が経験から得た知識や感覚として存在するものです。生成AIは、技術棚卸のプロセスにおいて特に形式知の整理において強力な役割を果たしますが、暗黙知の取り扱いには限界もあります。今回は、生成AIを活用した技術の棚卸の利点と課題について考えたいと思います。

 生成AIは、技術の棚卸における形式知の整理を飛躍的に効率化します。特許文献、報告書、技術仕様書などの大量の技術文書を解析し、関連する技術要素を抽出、分類、構造化することが可能です。弊社においても技術構造化手法 iMap®︎のフレームワークを学習させた生成AI(ChatGPT)を、技術の棚卸に活用しています。生成AIを活用することで、これまで膨大な時間を要していた技術文書の解析を、短時間で正確に行うことが可能となります。

 一方で、暗黙知は生成AIにとって扱いが難しい領域です。暗黙知は技術者・研究者個人の頭の中に存在し、経験や感覚、直感に基づいた知識であるため、文書化されていません。この暗黙知を棚卸するためには、少人数での対話や議論を通じた知識の言語化が必要です。弊社のコンサルティングでは、技術者・研究者がディスカッション(ワイガヤ)を重ねることで、個人の知識を形式知化し、共有知へと昇華する下記のプロセスを支援しています。

  1. 少人数でのワイガヤ:現場の技術者・研究者が集まり、経験や知見を共有
  2. 生成AIの活用:議論の記録を生成AIで分析し、知識を構造化
  3. ナレッジ共有:可視化された知識を組織内で共有し、フィードバックを得る

 生成AIは形式知の構造化において強力なツールである一方で、暗黙知の可視化には人的なコミュニケーションが不可欠です。人とAIが補完しあいながらいかにコラボレーションするかは、技術の棚卸を効果的に進め、さらには技術イノベーション創造プロセスを進化させる鍵を握っていると言っても過言ではありません。

ケミストリーキューブ
平木 肇

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