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コラム:コンサルティング現場からの気づきCOLUMN

第38回 技術の棚卸はなぜうまくいかないのか

 技術の棚卸は、イノベーションへむけた自社技術の戦略的な活用・開発を推進するためのマネジメント手法として、ものづくり企業・技術系企業によって取り組まれています。その多くは、技術企画・管理(会社や部門によっては研究企画・管理、開発企画・管理などの場合もあります)のスタッフ(時にはコンサルタントを雇って)が、現場の技術者、研究者にヒアリングしながら、これまでの事業活動・研究開発活動のなかで蓄積してきた技術を洗い出し、分類・整理して技術リストとしてまとめる、個々の技術の内容を記述したドキュメントを作成するといったものです。さらに、整理した技術をポートフォリオのような形でまとめ直し、経営者への報告を行う場合もあります。

 しかし、弊社のコンサルティング経験では、このような技術の棚卸は、多くの場合、ほとんど有効な成果をあげていません。確かに、今まで漠然として捉えられていた自社の技術が具体的に記述され、可視化されること自体に一定の意味はあると思いますが、そのアウトプットは、実際の仕事においてほとんど活用されず、結局忘れ去られて社内のサーバーのどこかで眠ってしまっています。酷い場合には、経営者やCTOなどのトップマネジメントが変わるたびに、何度も棚卸を繰り返しているという例もあります。そのたびに、R&D現場は「また、やるの?」「あれ、何かの役に立つの?」「依然やったものはどうなったの??」などと思いながらも、企画・管理スタッフの要請に従い、そのために多くの時間を使っています。

 では、技術の棚卸はなぜうまくいかないのでしょうか?

 これにはいくつかの理由があると思いますが、その最も根本的な理由の一つとして、技術の棚卸そのものが目的化してしまっていることが挙げられます。技術の棚卸は、イノベーションを生み出すための組織能力を高める手段であり、その目的は“イノベーションを生み出すこと”です。決して、技術の棚卸を行うことが目的ではありません。「そんなことはわかっている」と思われる方もおられるかもしれませんが、実際には、多くの会社で、技術の棚卸そのものが目的となってしまい、 “なぜやるのか(why)”“その成果をどう活かすのか(for what)”について曖昧にしたまま、棚卸するためのフレームワークや進め方といった“how”ばかりに目が奪われてしまう傾向があります。そして、活動に多くの時間を費やした結果、“細かく記述した技術リストはできたけど、それで何なの?(so what)”という状態に陥っています。

 もう一つの理由は、技術棚卸の実践プロセスが、R&Dの組織能力を高めるものになっていないことです。一部のスタッフやコンサルタントが、関係者にヒアリングをしたり、特許や報告書を調べたりして技術をまとめていくようなやり方では、詳細な資料は残り、綺麗なドキュメントによって上司や経営に報告できるかもしれませんが、現場の技術者、研究者にとっての新たな気づきや発見はほとんどなく、組織の力を高めることにはつながりません。イノベーションを生み出すための活動として技術の棚卸を機能させるためには、一部のスタッフによるスタティック(静的)な技術管理の仕組みとしてではなく、技術者、研究者のマインドとスキルを高め、組織・分野の壁を越えた共創と技術の融合を促進する、さらにはイノベーションへむけた新たなカルチャー(組織文化)を醸成するダイナミック(動的な)な組織活動として、そのプロセスを設計することが必要です。

 イノベーションへつながる効果的な技術の棚卸を実践するためには、自社の組織能力の現状と課題をしっかり見つめ、未来にむけてどのようなR&Dを目指すのか、その中で技術の棚卸をどのように機能させるのかを描き、共有したうえで、現場の技術者、研究者にメリットがある活動として、そのプロセスを設計すること、そして、一部のスタッフによるものではなく、経営と企画・管理、そしてR&D現場が一体となった活動として取り組むことが重要です。弊社では、これらの考え方にもとづき、個々の会社の特性や課題、そしてR&D革新への思いと志を踏まえたうえで、それぞれの会社に応じた効果的な技術の棚卸の実践と、イノベーションへむけたR&Dの組織能力の向上を支援しています。

2020年7月
ケミストリーキューブ
平木 肇


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