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コラム:コンサルティング現場からの「気づき」COLUMN

第9回 企業成長の意味

 前々回(第7回)のコラムにて、技術経営の3つの要件を紹介し、前回(8回)は、その第1の要件「長期的視点にたって企業が経営されていること」について取り上げました。今回 は、第2の要件である「企業の経営資源である技術を中軸に据えて企業成長を実現していること、もしくは実現しようとしていること」について深堀したいと思います。

 第2の要件の中には、2つの重要なキーワードが含まれています。ひとつめのキーワードは、「経営資源である技術」です。この言葉の意味に ついては、第6回のコラム「自社の強み技術をどう定義するか」で詳しく紹介しましたので、今回は割愛したいと思います。ふたつめのキーワードは、「企業成長」です。今回のコラムではこのキーワードに着目し、その意味を紐解くことをとおして第2の要件を深めていきたいと思います。 「企業成長」というと、一般に企業の売上及び利益が増加すること、企業規模(貸借対照表 の資産額)、あるいは企業価値が増大すること(ここでの企業価値は、将来の企業のキャッシュフローの創出力を反映しているという意味で株式時価総額としておきます)をイメージする場合が多いと思います。しかし、第2の要件にある「企業成長」は、上記のもののみを意味しているわけではありません。

 余談になりますが、人間を例にとって「成長」の意味を考えてみましょう。人間が赤ちゃんから幼児、少年期、青年期を経て成長していく際、単に体が大きくなることだけを指して健全な成長とは言いません。体と同時に、知性を身につけ、理性を身に着け、精神的な成長が伴ってこそ、成長ということができます。そして、生きていくうえでぶつかる様々な問題や課題を周囲の人々と協力しながら解決し、社会の一員として貢献していく能力を身に着けていくこと、そして経済的に自立し生きていける力を身に着けていくことが「成長」の意味であると思います。そう考えると成長とは決して子供が大人になる過程のみを指すのではなく、大人になってから学び、社会の中で貢献する力、自立して生きていく力を高めていく過程もまさに成長であると思います。

 さて、企業に話を戻しましょう。私は、企業でも人間と同じことが言えるのではないかと思います。すなわち、企業 成長とは、規模が大きくなることのみを意味するのではなく、顧客価値を創造するために、社内外の関係者と協力しながら様々な問題や課題を解決する能力を高めていくことであると思います。すなわち、売上や利益の増加や企業価値の増大は、企業成長の目標ではなく、企業が健全に成長した結果なのです。 とはいえ、人間が水や食べ物がないと生きていけないように、企業は利益がないと生きてはいけません。顧客に商品をコストを上回る価格で買っていただくことで創出した利益を、再投資することにより企業は成長します。すなわち、顧客の課題や問題の解決を事業として取り組み、利益につなげる仕組み、すなわちビジネスモデルを生み出す力を高めることが必要になります。

 余談になりますが、新商品・新サービスの価格を決めるとき、商品にかかる原価を積み上げ、それに一定の利益率(利益額)を上乗せしたものを基準に、競合商品の価格を考慮して売価を計算するやり方がありますが、「利益は顧客に価値を提供した結果である」という上記の考え方から言って、この方法はあまり適切とは言えません。価格を決めるためにまず最初にやらなければならないのは、今回の商品の価値に対して顧客はいくら払ってくれるかを見積もることです。そして、見積もった価格を売価として、価値をしっかりとキープしながらどれだけコストを下げることができるか(原価を下げる工夫)を検討する、あるいは、さらに顧客への提供価値を高めることで売価を高めることができるか(売価を高める工夫)を検討し、利益額を見積ります。この価格設定の方法は、商品の価値を明確化したうえで売価及び利益を見積もるため、原価の目標がより合理的になり、原価低減のモチュベーションを高めることになります。また、商品の価値を明確に訴求することができれば、競合他社との単純な価格競争から脱却することにもつながる可能性があります。さらには、自社の商品が提供する価値にどれくらいのお金を払ってくれるのかを見極める力を高めることにも繋がります。

 企業成長とは、決して企業規模や売上、時価総額の拡大のみを指すのではなく、「企業が顧客価値を創造するための能力を高めること」そして、「顧客価値を適正な利益につなげるビジネスモデルを生み出す力を高めること」を意味しています。

2013年11月
株式会社ケミストリーキューブ
平木 肇



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