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コラム:コンサルティング現場からの「気づき」COLUMN

第6回 自社の強み技術をどう定義するか

 近年、技術経営(MOT:Management of Technology)は、企業、とりわけものづくり企業において、欠かせない経営手法となっています。特に、グローバル経済の進展による競争の激化、新興国の台頭による市場の多極化など、ダイナミックな環境変化の中で、継続的な企業成長を実現していくためにイノベーションの重要性が益々高まっており、技術経営を経営の戦略課題として取り組む企業も増えています。しかし、実際には「単に研究所長の肩書きがCTO(技術統括役員:Chief Technology Officer)になっただけ」「組織体制は変わったが仕事の中身はほとんど変わっていない」「現場のミドルマネジャー及び技術者、研究者は、技術経営についてほとんど理解していない」など、多くの企業において、技術経営が十分機能していないことも現実です。

 技術経営は、企業経営の中でも新しい分野であり、その定義や範囲はまだ曖昧な部分も多くあります。そこで、ここでは、私としての定義や考え方をもとに議論していきたいと思います。私は、技術経営(MOT)を、「技術を経営戦略の中核に位置づけ、顧客価値の創造へ向けて、その獲得・強化・活用を戦略的に行うことにより、継続的な企業の成長と進化を実現すること」と定義しています。この定義からもわかるように、技術経営は、決して技術部門や研究開発部門だけの課題ではなく、経営戦略としての課題です。

 技術経営に取り組む上で、最初にぶつかる課題は、”自社の強みとなる技術をどう定義するか”です。強み技術というと、自社が保有する個々の要素技術をイメージしてしまいがちです。要素技術とは、商品を構成する科学技術のことであり、商品を設計する、製造する、評価・分析するといった、ものづくりに必要な技術的な方法や科学的な知識と理解できます。実際のコンサルティング現場において、「あなたの会社の強み技術は何ですか?」と問いかけると、「※※の画像処理技術です」「※※をセンシングする技術です」「※※の微細加工技術です」「※※の物性分析の技術です」などといった答えが返ってくることが多くあります。

 確かに、これらは会社の持つ重要な技術なのですが、強み技術を定義するためには、より広い視点で技術を捉えなおすことが必要です。そして、そのために最初に考えなければならないのは、実は技術そのものではないです。それは、顧客価値です。まず、自社がお客様に対してどのような顧客価値、すなわちベネフィットを提供しているのか、さらには、なぜお客様は自社を選ぶのかを問いかけ、顧客価値の次元で自社の強みを具体化したうえで、それを実現している技術的能力(平たく言えば、技術力です)を紐解くのです。ここで、敢て技術的能力という言葉を使いました。その意味は、個々の要素技術にとどまらず、技術を用いて問題解決できるノウハウやスキル、組織のメンバーが連携し合ってスピーディーに仕事を進める力、あるいは社外と連携したプロジェクトをうまく運営する力など、技術を創造・蓄積・進化・活用するための組織能力を含めて、強み技術を定義することが重要だからです。

  例えば、ある化学素材メーカーA社は、要素技術としては、特に独自性はないのですが、要素技術を用いて顧客の要望を実現する問題解決力が圧倒的に優れていることで、市場において強いポジションを持っています。A社の強みは、顧客の要望を正確に理解し、さらにその先を提案できる技術提案力であり、新しい化学反応をデザインし、実験をとおして技術として確立できる開発力です。そして、A社は、この独自能力を継続的に高めるために、営業・研究開発・技術サービスの3者が一体となって顧客への問題解決に取り組む組織プロセスに磨きをかけると同時に、研究開発を含めてすべての社員が常に「顧客のメリットは何か」を考えて仕事をすることに取り組んでいます。

 自社の強み技術を定義するために、技術の棚卸と称して、個々の要素技術を書き出した詳細な技術リストを作成し、評価をしている会社を目にすることがありますが、そのような取り組みはあまりお勧めできません。結果として、作成された技術リストは活用されず作っただけになり、サーバーの片隅で忘れ去られている例が多々あります。技術の次元ではなく顧客価値の次元で自社の強みを具体化すること、そしてそれに紐づく技術について組織能力を含めた広い視点で考察すること、これら2つの点が自社の強み技術を定義するための要諦です。

2013年10月
株式会社ケミストリーキューブ                                 
平木 肇




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