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ケミストリーキューブは、ものづくり企業の成長と技術人材の開発を支援するコンサルティング会社です。

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コラム:コンサルティング現場からの「気づき」COLUMN

第30回 ものづくり企業におけるビジネスモデルの基本着眼

 弊社は、イノベーションを「価値の創造と具現化」と定義しています。価値の創造とは、言うまでもなく新たな 顧客価値を創り出すことであり、イノベーションの根幹です。そして、具現化とは、「事業としての具現化」です。たとえ、新たな顧客価値を生み出したとしても、それを継続的に収益があがる事業にできなければ、企業の発展と成長には繋がりません。具現化は、価値の創造と並ぶイノベーションの両輪であると言えます。

 具現化を考えるうえでの鍵はビジネスモデルです。ビジネスモデルは「顧客に価値を提供し、企業に利益をもたらたす仕組み」であり、強い事業をもつ企業の多くは、他社とは異なるビジネスモデルを実現しています。例えば、ある素材メーカーは、フラットパネルディスプレイ(FPD)を構成する一材料メーカーでありながら、社内にパネルそのものを製作できるラインをもち、自社材料を用いたパネル製造の技術、すなわち顧客先の技術を併せて研究開発しています。それらのパネル製造技術は、自社の材料を使いこなすための技術として材料と組み合わせてパネルメーカーに提供されています。また、ある製造装置メーカーは、顧客工場において、自社装置を用いる工程の運営・管理を担うことで、単に装置売りではない、製造装置とオペレーションを組み合わせたビジネスモデルを展開しています。

 ビジネスモデルは、大きく3つの仕組みに分けて考えることができます。1つめは、顧客価値を提供するための仕組み(以下、価値提供の仕組み)です。これは、どのような顧客に対して、どのような価値を、どのような手段で提供するのかを具現化するもので、ビジネスモデルを構成する核と言えます。2つめは、収益を生み出すための仕組み(以下、収益化の仕組み)です。これは、顧客価値をどのように売上や利益に変換するのかを具現化するもので、インストールベース(機器を無償もしくは安価で提供し、その機器で使う消耗品で利益をあげる仕組み、家庭用プリンタなど)や、広告モデル(価値の受益者とお金を払う者が異なる仕組み、インターネットの検索・情報サイトなど)、最近ではフリーミアム(多数の会員を無料サービスで惹き付け、その一部が有料サービスを利用することで収益を得る仕組み、スマートフォンの無料ゲームアプリなど)といったものが知られています。そして、3つめは競争優位を確立・持続するための仕組み(以下、競争優位の仕組み)です。これは、自社の製品・サービスが優先的に顧客に選択され、収益を生み出し続けるための仕組みです。
 実際には、上記3つの仕組みを有機的に統合することで強い事業となるのですが、私の知る限りでは、世の中にあるビジネスモデルの教科書や解説書の多くは、価値提供の仕組みと収益化の仕組みに重点が置かれており、競争優位の仕組みがあまり取り上げられていない、取り上げられていても、ものづくり企業が参考にする内容としてはかなり物足りない印象を受けます。

  ものづくり企業における競争優位の仕組みの狙いは、「自社の技術コアを市場における競争優位に直結しつづける」ことです。技術コアとは、自社の強み技術を核にしたすり合わせ領域をモジュールにしたものであり、他社が容易に真似できないコアコンピタンスを定義したものと言えます。「市場の競争優位」とは、顧客から優先的に自社が選択される状態、そして価格競争に陥らない状態を意味しています。すなわち、他社が容易に真似できない擦り合わせ領域をいかに技術モジュール化し、それを核にして、価格競争に陥ることなく優先的に顧客から選択されつづける状況をどう創り出すかが競争優位の仕組みにおける基本着眼であると言えます。

 厳しい競争に晒されているDVDメディア産業において、三菱化学は、自社の技術ノウハウが詰まった色素材料とスタンパー(DVDメディア製造にて使用する金型原盤)を組み合わせて技術モジュール化し、これを用いたメディア製造技術を製造装置と一体化したソリューションとしてDVDメディアメーカーに提供する独創的なビジネスモデルを展開し、大きな利益を生み出しています。

 ビジネスモデルは、R&Dにとって一見遠い話題のように感じる方も多いのではないかと思います。しかし、どのようなビジネスモデルをつくるかによって、研究開発すべき技術の方向性やテーマ、すなわち技術戦略が大きく変化します。そして、R&Dが持つべき技術力・組織力も変わってきます。ビジネスモデルは、R&Dにとって決して他人事ではなく、自分事なのです。とはいえ、ビジネスモデルの構想・設計は、R&Dにとってハードルが高い作業であることも事実であり、事業・知財・R&Dの連携、いわゆる三位一体の取り組みが必要になります。一般的に三位一体は、知財を事業や研究開発に取り込むアプローチとして用いられますが、本来は、事業を起点に各機能が有機的に連携する経営システムのコンセプトであり、その核になるものはビジネスモデルであると考えます。

 
弊社は、ものづくり企業における競争優位の仕組みを重点にしたビジネスモデルのフレームワークとして、テクノロジードリブン・ビジネスモデル(以下、TDB)を開発してきました。TDBでは、自社の強み技術を組み合わせた技術コアを定義し、それを搭載したソリューションを具体化しながら、自社・顧客・パートナーが有機的に繋がるエコシステム、標準化・オープン化とそれに伴う知財戦略、顧客が自社を選択しつづけるメカニズムなどの観点を組み合わせて競争優位の仕組みを構想・設計します。また、併せてビジネスモデルを具現化していくための技術戦略及び組織能力・資源を具体化します。
 イノベーションがものづくり企業の経営戦略の柱となる中、R&Dが自ら主体的に取り組む課題として、ビジネスモデルの重要性が高まっています。弊社は、世の中にある一般的なフレームワークではなく、R&D現場が主体となって取り組むための実践的かつ独自のフレームワークによって、ものづくり企業における強い事業の具現化に貢献していきたいと考えています。

2017年3月
ケミストリーキューブ
平木 肇


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